クレアブログ

【院長ブログ】神様のクイズのつづき


先日、他院から輸血とセカンドオピニオンで来院された、
きなこちゃんというトイプードルの11歳6カ月の女の子の話です。
前の病院では、子宮蓄膿症があるが血小板がかなり低下しており手術はすぐにできないので、
血小板の数の回復を待って手術しようとのことでした。

そこで血小板を輸血で補ってからその後に手術すべきとのことで、
当院での輸血を希望されました。ここで私の考えたことは、まず血小板の低下の原因でした。
まず採血時に細い血管から採血することで採血中に血が固まり、血小板が低下している可能性です。

当院では首の太い血管から採血しており、この可能性はほぼ否定されます。
残る可能性は、子宮の内膜からの出血による血小板の消費と、
炎症などの最終段階に起こるDICと言われる状況と免疫が血小板を攻撃するという病気の可能性です。
もし免疫が攻撃しているなら、かなり副作用のきつい薬を使うことになります。
免役が攻撃する病気は発生頻度が低いことと、高容量で副作用のきつい薬を使うことを考慮すると、
この可能性に基づいて治療するのは合理的でないと判断しました。
残る2つの可能性は、DICと出血による消費です。この二つに関してはよく考えると、大本の原因は同じです。

DICが発生していると仮定すると子宮蓄膿症が原因と考えられますし、
出血によると考えるとそれも子宮蓄膿症に起因します。
ということは、この両方の病態に対する治療は手術で子宮を取り除くことなのです。
逆を返せば、このまま待っていても血小板は上昇しないと考えられました。

この様に考え、血小板は低いですが手術は可能なレベルと判断し、
輸血は行わずに(輸血を実施しても赤血球は上昇しますが、血小板はあまり上昇しないことから)手術に踏み切りました。

術後は次の日から血小板が増加し始め、数日の入院の後元気に退院してくれました。
先日抜糸の際の血液検査では血小板は正常値になっており、オーナー様も喜ばれていました。
この経験を通して、論理的に考察することの重要性を改めて思い知らされました。
やはり、神様のクイズは難しいですが、解けた時の喜びはひとしおです。
これからも謙虚におごることなく、慎重に神様のクイズに挑戦していきたいと思っています。
きなこちゃんが元気になってくれて本当に良かった。では、また。

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