クレアブログ

【院長ブログ】安楽死について

今回のお話は、非常にデリケートで、大きく価値観が影響するテーマです。
私は、安楽死は最後の治療という考え方をしています。
きちんとした治療を受けても回復の見込みがなく、耐え難い苦痛が続くなら、
安楽死は1つの手段として考えるべきだと思っています。

安楽死に関しては否定的な意見の方もおられることは十分に承知しています。
獣医師の中でも考えに違いがあり、実際にオーナーさんが希望しているにもかかわらず安楽死を
断られることも多いようです。しかし医療が発達した現在においては、実際に過度な延命が弊害となるような事例も
出てきていますし、過度な延命によりオーナーさんの心と動物の体に大きな負担をかける事態も発生することがあります。
この様な時には、オーナーさんと十分に協議をさせていただいた上で、安楽死を実施させていただくことがあります。

人間の医療において、スイスで一定の条件の下で安楽死が認められるようになっているのも、
医療の限界を理解し、患者さんの尊厳を尊重しようという考えに基づく流れかと思います。
その考え方は、動物やそのオーナーさんの心に対しても適応されるべきだと私は思います。

次に実際の安楽死の方法ですが、まずは血管にチューブを入れます。
これは一般的に入院や手術時の点滴と同じ処置ですから、大きな負担はありません。
次にプロポフォールという麻酔薬をチューブから注入し、麻酔で寝ている状態になります。
プロポフォールは人間の手術時にも使う麻酔薬ですから、もちろん意識も無くなりますし、
痛みや苦しみも全く感じない状態になります。
その後、筋弛緩薬を注入し、筋肉を弛緩することで呼吸や心拍が止まります。
この間は、全く意識が無く、苦しむこともありません。

最後に、安楽死のタイミングです。
オーナーさんからよく受ける質問に、安楽死のタイミングがあります。
タイミングを聞かれたときに、私はいつも
「何年も一緒に暮らしてこられたオーナーさんが見ていて、苦しそうで見てられないとなった時がそのタイミングです。」
とお答えしています。そして実際にそのタイミングに私が違和感を抱いたことはありません。
やはり、オーナーさんはご自分のペットの事をよく観察し、理解されておられると感心することが多いです。
そして、オーナーさんが簡単な気持ちで安楽死を望まれていると感じたことは1度もありません。
皆さん本当に悩まれて、最終的に決断されています。

私はその悩まれた上で出された決断を尊重したいと思っていますし、それが私にできる最後の治療だと信じています。

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