麻酔の安全性について②
こんにちは、クレア動物病院の院長の田中です。
前回の麻酔の安全性についての続きをお話しさせていただきます。
今回は「年齢が高いので麻酔は大丈夫ですか?」との質問にお答えします。
例えば10歳のワンちゃんやネコちゃんを想定してみましょう。
ワンちゃんやネコちゃんの10歳は、人に置き換えると60歳前後と言われています。
あれ?何か変ですよね。
人の場合で、60歳で高齢だから麻酔は無理ですと医師から告げられることはないですよね。
むしろ、60歳以降の方が麻酔をかけた手術も多くなるのではないかと思います。
現在の獣医療では、ほとんど人と同じ方法で同じようなお薬を用いて麻酔をかけています。
また、人同様に、ワンちゃんやネコちゃんも10歳を超えてからの方が手術や検査で麻酔をかけることが増えます。
これらのことから、「年齢が高いので麻酔をかけられない」は、
人で考えれば「60歳を超えているから麻酔をかけられません」と言われることと同じです。
私たちが「60歳を超えているから麻酔をかけられません」と言われたら、多くの方が少し違和感を
覚えるのではないかと思います。確かに高齢になると内臓の機能が下がることは考えられますが、
それは麻酔前の血液検査とレントゲン検査で事前に把握することができます。
以上のことから、麻酔前に適切に検査を行い、その結果に基づいて手術や検査を行えば、
年齢に関係なくそんなに大きなリスクを払わずに麻酔をかけることができるのです。
後は、上記のように麻酔によって得られるメリットが大きければ、麻酔を実施すべきだと考えています。
重要なことは、感覚的にではなく客観的に、麻酔をかけることで得られるメリットと麻酔をかけないことで起こる
デメリット(腫瘍の拡大や歯周病の進行など)を比較していただければと思います。
我々は、ついつい目の前の麻酔のリスクにばかり目をとられますが、
逆に麻酔をかけて手術や検査を行わないことによるデメリットもきっちりと考慮する必要があると思います。
獣医療ではまだまだ、麻酔をさけることにより起こってくるリスクをきっちりと説明できていない気がします。
これは、私を含めて医療人が麻酔のリスクを過剰に言い過ぎている部分もある気がしていて、
反省すべき点かもしれません。
ワンちゃんやネコちゃんの寿命が延びてきたのは非常に喜ばしいことですが、
その分麻酔を含めて色々と悩むことも増えてきていますね。
当院ではオーナー様と一緒に、そのような悩みを共有しながら答えを出して、
時には勇気を出して麻酔等のリスクに対応していける病院として努力していけたらと思います。
なかなか聞きづらいことかもしれませんが、気になることは診察中でもお気軽に
ご相談くださいね(=^・^=)