麻酔の安全性について➀
こんにちは!クレア動物病院の院長の田中です。
今回は麻酔についてお話ししたいと思います。
オーナー様からよく質問される内容に、麻酔の安全性についてがあります。
例えば「麻酔は安全ですか。」や「10歳を超えていますが麻酔は大丈夫ですか。」といった質問です。
これらの質問に対する私の答えは、「ほぼ問題なく麻酔をかけることができます。」です。
まず、今回は前者の麻酔の安全性についてお話いたします。
先日私が読んだ文献には麻酔に関連する死亡事故は約2000頭に1頭との内容が書かれていました。
実際に色々な文献を読むと、ほぼ1000~2000頭に1頭といった内容が書かれています。
私の経験上(大学病院や前職の二次診療施設を含めて)も、感覚的には2000頭に1頭ぐらいの確率のように
思います。この2000分の1の確率を高いと考えるか低いと考えるかは個人の考え方によると思いますが、
重要なことは麻酔をかけることによって得られるものが2000分の1の確率で起こるかもしれない
麻酔事故より大きいかどうかだと思います。
獣医の世界も人の医療の世界もこのあたりの確率の話をあまりせず、漠然と「麻酔にはリスクがあります。」とか、
同意書を書いてくださいとかになっている気がします。
確かに時代背景として、リスクの説明は大切ですし、小さな確率(2000分の1)のことに多くの時間を割いて
お話ししないといけない時代になっていることも事実です。ただ、我々は麻酔で得られるメリットと、
麻酔のリスクをいつも客観的にきっちりと評価すべきであると考えています。
例えば、避妊手術や歯石除去などがこの良い例だと思います。
避妊手術は1回目の生理までに行うと、乳腺腫瘍の発生率を大きく下げることができます。
具体的には、避妊手術をしない場合は乳腺腫瘍の発生率は4分の1と言われていますが、
1回目の生理までに避妊手術を行うと乳腺腫瘍の発生率が250~400分の1(文献により少し差があります)に
下げることができるといわれています。つまり、早期の避妊手術によって、乳腺腫瘍の発生を約100分の1に
減らすことができるのです。この両者の確率を比較すると、多くの人が避妊手術の重要性にご同意頂けると
思います。歯石に関しては、歯石の付き具合で歯周病の進行が変わりますので、
明らかな数字はお伝えできませんが、やはり麻酔のリスクを上回る大きなメリットがあるものと考えています。
我々は、このような内容を、きちんとオーナー様と相談できる病院でありたいと考えています。
次回は年齢が高い子の麻酔についてお話しさせていただきます。