麻酔・鎮痛
麻酔について
必要な麻酔薬の種類や量は、動物の体の状態や手術内容などによって大きく異なります。
また、麻酔により心臓や肺の機能が低下します。
そのため当院では、麻酔をかける前に必ず血液検査、レントゲン検査を行い、動物の体の状態をしっかり確認します。その上で一頭一頭に合わせた麻酔薬を選択し、適切な麻酔管理を行っています。
代表的な例としては以下の場合などがあります。
心臓に問題のある場合
麻酔によって平常時以上に心臓の機能が低下することが予想されます。
心臓の機能が低下すると、全身の循環が悪くなり全身に悪影響が及びます。
よって当院では心臓に問題のある動物に対しては、心臓や呼吸機能に影響を与えにくい麻酔薬や、麻薬系のケタミンの持続点滴などを使用しています。また症例によっては、血圧維持のためにドパミンやドブタミンの持続点滴なども行っています。
肝臓に問題のある場合
麻酔薬は主に肝臓で分解されます。
肝臓の機能が低下している場合、薬の分解に時間が掛かるため、通常よりも麻酔の効きが強くなることが予想されます。
これらの理由で肝臓で分解される時間の短い麻酔薬や、肝臓以外で分解されるレミフェンタニルなどの麻薬系鎮痛薬等を選択しています。
腎臓に問題のある場合
肝臓で分解された薬物の多くは腎臓から尿という形で排泄されます。
腎臓に問題がある場合、この機能が低下しているため、薬や体内で作られた不要な物質の排泄が遅くなります。
そのため薬の排泄を早くし、腎臓を保護するために腎臓への血流を増やす目的で、点滴や薬剤(ドパミン、ドブタミン)の持続点滴を行っています。
「麻酔の流れ」
当院での手術における麻酔までの流れは以下のようになっています。
- 術前検査
血液検査、レントゲン検査を行い、心臓、肺、内臓系に異常がないか調べます。 - 血管確保
血管にカテーテルをいれます。ここから点滴や薬剤を投与します。 - 点滴
手術中の血圧低下を防ぐ目的で、手術前から流し始めます。 - 前投薬の投与
薬によって動物を眠らせます。 - 気管挿管
気管にチューブを入れることで、麻酔中の呼吸の管理とガス麻酔による麻酔の維持を行います。 - 麻酔管理
麻酔中はモニターを見ながら、心拍数、血圧、麻酔濃度etcを細かく確認します。また10分ごとに動物の状態を麻酔記録用紙に記入するようにしています。 - 尿量のモニター
心臓や腎臓に問題がある場合や、出血の多い手術では血圧低下を招くことがあります。
血圧低下は命に関わることがあるため、膀胱にカテーテルを入れ尿量のモニターを行い、血流量の確認をしています。
これらを行うことでより安全な麻酔管理を行うだけでなく、麻酔からの早期覚醒を行うことができ、麻酔に対する負担を軽減することが可能となります。
鎮痛について
我々は、痛みを取り除くことが動物の早期回復とオーナー様の不安の軽減につながると考えています。
そのため病気や手術などで痛みが発生する場合には、適切な鎮痛管理を行っています。
比較的痛みの少ない手術(避妊手術、去勢手術etc)でも短期作用型と、長期作用型の2種類の鎮痛薬(メタカム・ブトルファノール)を使用し、最大限痛みを取り除くよう努めています。
痛みが重度と予想される場合は麻薬系の鎮痛薬(ケタミン・フェンタニル・レミフェンタニルetc)を使用するなど、その動物にあった数種の鎮痛薬を組み合わせて用いています。
また、膵炎などの痛みの強い内科疾患にも、鎮痛薬(フェンタニルetc)を用いています。
<当院で使用する鎮痛薬の種類>
メタカム、ブトルファノール、トラマドール、ブプレノルフィン、ケタミン、フェンタニル、レミフェンタニル