クレアブログ

【院長ブログ】リスクの先にあるもの

少し暖かくなってきましたね。
そういえばもう3月、時間が過ぎるのは早いですよね。
ベランダのエンドウ豆の苗が一気に大きく成長してきて、春を感じました。

本日は、当院でインスリノーマの摘出手術を行って、
病気をものともせず元気に頑張ってくれているワンちゃんのお話をしようと思います。
ワンちゃんの名前はひめちゃんといい、体重は3.5㎏程の可愛いミックス犬の女の子です。
始まりは2018年の8月に遡ります。

他院で治療しているが発作が止まらないとのことで、セカンドオピニオンで来院されました。

すぐにCT検査を実施し、膵臓に直径1.5㎝程の腫瘍を認めました。
オーナー様と協議の上、翌日に腫瘍の摘出手術を実施することになりました。
オーナー様は大いに悩まれていましたが、このままでは発作が続き、
低血糖で亡くなってしまうことが想定されましたので、苦渋の決断をなさいました。
今思い出しても、なかなか勇気のいる大変な決断だったと思います。
病理検査ではインスリノーマとの診断でした。

術後は想定されていたこととはいえ膵炎が起こり、高血糖も起こりました。
点滴やインスリンによるコントロールで何とか持ちこたえてくれて、
10日間の入院の末、無事に退院してくれました。
その後の通院中も肉芽腫性脂肪織炎やてんかん発作も起こりましたが、
全て乗り越えてくれて、その後4年程平和な日々が続きました。

ところが、2022年の10月に血液検査では低血糖を認め、血液中のインスリン濃度も高値であったことから
再度CT検査を実施し、インスリノーマの再発を認めました。今回は副腎にも転移を疑う所見が認められました。
年齢も16歳4カ月になっていたことから、前回にもましてオーナー様は悩まれました。

数日悩まれた末に、やはりこのまま低血糖の発作で亡くなるのは避けたいとのことで、
リスクを理解された上で手術を選択されました。術後は膵炎や尿量の減少や低血糖が認められましたが、
今回も乗り越えて無事に退院することが出来ました。このまま無事に春を迎えることが出来そうです。

 犬のインスリノーマは平均寿命が短く(半年~1年半)、悪性度の高い腫瘍です。
その腫瘍に対して2度も手術に挑まれる決断をされるに至った心持を察すると、本当に頭が下がります。
年齢や手術並びに術後のリスクを考慮すると、非常に大きな決断だと思います。
ただ逆を返せば、その決断があったからこそ、合計で4年半程の平和な時間を共有できたこともまた事実です。
目の前のリスクは大きく見えますし非常に怖いという心理も理解できます。
でも、そのリスクの先にしか望む結果が得られないのであれば、勇気を振り絞って戦うしかないのかもしれません。
リスクの先の希望を見つめながら。我々がそのサポートを出来るのであれば、
これ以上にやりがいのあることはないと思っています。
これからも皆さんのサポートができるようなチームであるために、日々努力していこうと思います。

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