【院長ブログ】安楽死におけるサイレントマジョリティー
朝晩の暑さが少し和らいできましたね。過ごしやすくて、食べ物がおいしい季節がやってきますね、楽しみです。
あいちゃんは、胸にしこりが出来て、切除手術を行うことになりました。
悪性ではなさそうなので心配はないと思いますが、案外と大げさな性格なので術後の管理が大変そうで、
気をもんでいます。暑さに負けずスタッフはみんな元気にしています。
さて本日の話題は、とてもセンシティブな話題です。
あえてブログに書く獣医師も少ない話題かと思いますが、
題名にもあるようにサイレントマジョリティーが声を出さなければ
やはりお困りの方が判断に迷われることもあると思い書くことにしました。
先日、ある方とお話ししていた時に飼っていたワンちゃんの話になり、
その子が癌(骨肉腫という骨の癌)になって苦しんだ時に3件も動物病院に行かれたにも関わらず、
安楽死の話が出なかったそうです。思い切ってそのうちの1件で安楽死の話をしてみたそうですが、
全く相手にしてもらえなかったようです。
その話をお伺いして、私は複雑な心境でした。
もちろん私も安楽死を積極的に実施すべきとは思っていませんが、
やむにやまれず行うことについては否定すべきでないことと思っています。
人間の基準と同じで、代替治療が無いことと、
苦痛を取り除くことが出来ないことをある種の基準として考えてよいのではないかと思っています。
職業柄、色々な方と死生観についてお話しさせていただく機会が多いですが、
案外自分自身を含めて(人間に対しても)安楽死があっていいのではないかとの意見をお聞きすることが多いように思います。
私の感覚では、8-9割ぐらいの人は条件がそろえば安楽死は認められてもよいのではないかと考えておられるようです。
まさにこれが今回の題であるサイレントマジョリティーかと思います。
トラブルを避けるために(炎上しないように)日本人はあまり大きな声で安楽死についてオープンに話しませんが、
案外多くの方が安楽死について肯定的なご意見をお持ちであることを実感します。
当院では癌の診断を行ったときには、治療の方法は当然として、最終的に迎える症状や、
最悪の時には安楽死があることをお伝えします。私は安楽死という選択肢は、保険やお守りのように考えています。
保険などはよくお分かりと思いますが、できれば使わないに越したことはありませんよね。
でも、いざというときは安心できるので心強いと感じます。これがお守りや保険の重要な役割と思います。
安楽死という選択は、まさにこの役割なのです。一生懸命に治療し、できることは全て行った上で、
やはり苦しみが多くなるようであれば、最後の治療として安楽死もあってよいのではないかと考えます。
前出の動物病院のように、最初から安楽死を否定してしまうのは、
価値観の多様性を無視した動物病院(または獣医師個人)の一方的な価値観の押し付けのように思えてしまいます。
なので、この様な話をお伺いすると少し複雑な気持ちになってしまいます。
安楽死という選択肢は、決して少数派の残酷な選択ではありません。
色々と迷われたときは、是非一度ご相談いただければと思います。
当院は今後とも、色々な病気と真剣に向き合い、オーナーさんの多様な価値観を否定せず治療を行っていける病院でありたいと思います。