クレアブログ

【院長ブログ】強く願うということ(1)

やっと朝晩が涼しくなってきましたね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
当院はスタッフ一同元気にしております。先日、アイちゃんは胸にできた出来物の切除手術を行いました。
術後のカラー生活で、わがまま放題になっています。
術部もおおむね順調に治っており、今のところ心配ないものと思っています。

今回は、題名にもあるように、強く願うことのパワーについてお話ししようと思います。
症例は、ルナちゃんという10歳のトイプードルの女の子です。

まず4月9日に輸血が必要とのことで初めて来院されました。血液の濃さ(HCT)は9.1%と危機的な数値でした。
検査の上で免役介在性溶血性貧血(IMHA)の可能性が高いと判断しました。
オーナーさんと協議の上、進行が速いこととIMHAという緊急性の高い病気であることから考えて
早急に考えうる最大の治療を始めるべきとの方針になりました。

その日のうちに輸血を行い(輸血後はHCTが22%に上昇)、続いてガンマガードという点滴を行い、
高容量のステロイドとセルセプトという免疫抑制剤の内服をスタートしました。
ステロイドは胃粘膜を荒らしますので、胃薬も2種類服用し始めました。

4月13日にはHCTは28%に上昇しましたが、4月15日には24%に再度低下してしまいました。
そこでオーナーさんと協議の上、前々から検討していた脾臓の摘出を行うことになりました。
手術は無事に終わり、家にお返しすることが出来ました。
4月17日にはHCTが19.8%に低下しており、かなり厳しい状況になりました。

教科書的にはできることはほぼ全の治療を行っており、これ以上の治療法はあまりない状況でした。
4月20日にはHCTが17%まで低下してしまい、次回15%を切るようなら再度輸血が必要と判断しました。
この状況でも、オーナーさんは諦めずにできることをやりたいという強い意志をお持ちでしたので、
あまり効果が無いかもしれませんが再生医療をしてみますかとご提案させていただきました。

4月24日にHCTが12.8%に低下したことから、輸血を行う(輸血後はHCT36.5%)とともに
幹細胞(ステムキュア)の静脈点滴を行うことにしました。

その後5月2日の再診ではHCTは33.5%と維持できていました。

この日もステムセルの静脈注射を行いました。
5月10日には32%と良好に維持しており、再度ステムセルの注射を行いました。
ところが5月18日の再診でHCTが24.8%に急激に低下しました。
副作用を考慮し少し減らしていたストロイドの再増量を行い、セルセプトの増量とシクロスポリンという新しい
免疫抑制剤の内服を飲み始めることにしました。5月25日は28.6%、6月1日には31.5%と順調に回復してくれました。

つづく・・・

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