腫瘍

レントゲン写真腫瘍は、体の表面のしこりとして発見されることもありますが、肺など体の中にできている場合はなかなか気づくことができません。このような内臓の腫瘍では、最近元気がない、食欲がないなどの訴えで来院されて、血液検査やレントゲン検査、エコー検査を行い発見されることが少なくありません(写真1)

腫瘍治療の流れ

当院での腫瘍の治療の大きな流れは、次のようになっています。

  1. 発見されたしこり(腫瘤)が腫瘍かどうか、また腫瘍の種類はなにか(腫瘍の種類によって治療法が異なる)を知るために、FNAという検査を実施します。
  2. 外科切除を行うにあたって、転移が疑われたり境界がはっきりしない時にはCT検査を、脳などの神経系の腫瘍が疑われるときにはMRI検査を行います。
  3. 腫瘍の種類、動物の状態によって効果的な治療法(外科切除、抗がん剤、放射線療法など)が違うため、画像検査などの結果も考慮しながら一頭一頭に合わせた治療法をオーナー様と相談して決定します。
  4. 外科切除の場合は切除した腫瘤を、外科切除しない場合は鎮静(弱い麻酔)下でFNAよりも太い針(Tru-cut生検:図1)で切り取った腫瘤の一部を、病理組織検査に送り腫瘍の種類を確定させます。
  5. 腫瘍の取り残しがあった場合や、転移の可能性が高い場合などは、それに対応した治療(抗がん剤や放射線治療など)を行います。

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では、それぞれについて少し詳しく見ていきましょう。 まず初めに、腫瘍とは体内でコントロールが効かず、無限に増殖する細胞の塊です。腫瘍には、大きく分けて悪性と良性があります。良性とは周囲の正常な細胞との境界がはっきりしていて、転移や再発を起こしにくいものをさします。一方、悪性とは周囲との境界が不明瞭で、転移や再発を起こしやすいものをさします(図2)。この良性・悪性の判断は一般的には病理組織検査を行うことで判定します。ただ、病理組織検査を行うには腫瘤の一部もしくは全部を切除する必要があります。ところが、先にも述べたように良性であれば境界がはっきりしているので小さな切除で済みますし、悪性であれば大きく切除する必要があります。ということは、病理組織検査用の腫瘤を切除する(手術する)ためには、手術前に良性・悪性の判定が必要となります。これは矛盾ですよね。

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この矛盾を埋めてくれるのが、FNA(穿刺吸引細胞診)という検査です。FNAとは注射用の細い針を腫瘤に刺し、注射器で少し吸うことで針孔サイズの腫瘤を吸い取り、それを顕微鏡で見るという検査です。FNAの利点は麻酔や鎮静なしで行えることです。FNAにより、完全な良性・悪性の判定はできないまでも、ある程度の良性・悪性の判定が可能となります。また、FNAに加え、エコーやCTやMRIなどの画像診断で転移の有無や腫瘍の範囲などを調べ、手術や治療の計画を立てることもあります。これらの検査結果に基づき、腫瘤の切除の大きさを決め、手術を実施し、その切除した腫瘤で病理組織検査を行い、確実な診断を行います。 その後、この病理組織検査の結果に基づいて抗がん剤や放射線などの治療をプラスで選択していくこともあります。もちろんFNAの結果によって抗がん剤が最も効果的な腫瘍(例えばリンパ腫)である場合は、外科切除せずに最初から抗がん剤を用いることもあります。